『Wiki Way』ショートエッセイ(4)
Wiki との出会いの場にまつわるナイショ話


 僕が Wiki を知ったのは、山形浩生による Berlin FAQ の日本語訳だった…ということは「訳者あとがき」にも書いたことである。

 その Berlin FAQ 日本語訳ページを見ていただきたい。その中で参照されている Warsaw という WikiName が長らく dangling link だったのだが、そのページに昨年のある時期、

David Bowie's Song.

という下らないボケがいきなり書きこまれた。しかしその書きこみから数時間も経たぬうちに「ちゃうちゃう」とばかりに Warsaw の(Berlin のコンテキストにおける)的確な解説が書きこまれた。Wiki はノイズすら書きこみの原動力になるものなのだな、と感銘したのを覚えている。

 もちろん荒らしやイタズラは歓迎できないが、とにかく何かしら市がにぎわうというか、つまりは書きこみがないとその公開 Wiki は先に進まない。これは掲示板にも共通した問題だと思うが、閑散とした公開フォーラムに書きこみを行うというのは気持ちがひけるというか張り合いがないものである。掲示板をウェブ日記がわりにしている、もしくは公開 Wiki を自分のためのメモ書き、ナレッジベースの場と割り切っている場合もあるだろうが、第三者が書きこみ可能なシステムを公開するからには、やはりポジティブな形でその場が盛り上がったがいいに決まっている。この種の悪循環を断ち切る Wiki ならではのメソッドが生み出されれば、これこそが Wiki の認知度に大きな役割を果たすと思うのだが、現状としてはそうしたリードオフマンを担う人間がいないといけない、という話は『Wiki Way』に手を変え品を変え説明されていることである。

 そうなると上で紹介した Berlin Wiki への下らぬ書きこみも、それまで宙ぶらりん(dangling)だった用語についての記述を促したという点で意味があったものだと思う……などと偉そうなことは言えない。勘の良い読者ならとっくにお気付きだと思うが、その下らないボケをかましたのは泥酔状態のワタシだったのです。その与太者が数ヶ月後には『Wiki Way』の翻訳を手がけることになるのだから人生分からないものである。

 これはさすがに「訳者あとがき」にも書けなかったここだけのヒミツのナイショの話である。自分でやっておいてナンですが、あまりマネしないように…


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初出公開: 2002年09月30日、 最終更新日: 2002年09月30日
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