日本発の wiki クローンリスト


注記:『Wiki Way コラボレーションツールWiki』に特別付録として収録された同タイトルの文章は、以下の文章を元に編集したものであり、RWiki と howm に関する記述はウェブ版のみである。『Wiki Way』刊行にあたり、既存の記述にも修正を加えた。いずれにしろ両者は厳密には同一の内容ではないのに注意いただきたい(2002年9月2日)。

 Wiki を本格的に取り上げた初の書籍である "The Wiki Way" には様々な wiki クローンが取り上げられているが、それらの多くは主に英語圏で開発されたものであり、デフォルトの状態では日本語が利用できないものもある。またドキュメントを見ようにも英語ばかりでは、導入するのに敷居が高いと感じられることも容易に想像できる。

 素晴らしいことに、日本発の wiki クローンは既に数多く存在する。最近特にその開発が盛り上がっているように思える。これらは当然、デフォルト状態で wiki ページ中に日本語が利用できる。何よりドキュメントが日本語で用意されているし、その wiki クローンの利用者からなるコミュニティも存在するので、導入、利用の際に問題に遭遇した場合でも、そのコミュニティや wiki クローンの作者に質問し、フィードバックを得ることができる。

 この文章は、日本で開発された wiki クローンの代表的なものを紹介するものである。読者の利用環境、用途などの条件に合った wiki クローンを選ぶことができるだろう。

 この文章で紹介する wiki クローンは現在も開発中であり、機能向上が図られている(ものを選んだとも言える)。そのためどの wiki クローンも基本的な機能は備えており、その部分での格差はほとんどなくなっている。またその wiki クローンとしての進化により、この文章での解説が必ずしも適切でなくなる可能性もあるので、詳細な情報が必要な場合は以下の紹介に付した URL にアクセスし、最新版の機能を確かめていただきたい。

 この文章に取り上げられていないからといって、その wiki クローンが他のものより機能が劣るというわけではないということをお断りしておく。当然ながら「日本発の wiki クローン」、しかもオリジナルの実装、という基準で選択した結果であって、それ以外の wiki を低く評価しているわけでもない。

 現在は「wiki クローン」という言い方よりも「wiki エンジン」という呼び名のほうが一般的であるが、この文章では "The Wiki Way" にあわせる形で、「wiki クローン」に統一した。


YukiWiki

名称 YukiWiki
作者名 結城浩
公式サイト http://www.hyuki.com/yukiwiki/
実装言語 Perl
ライセンス バージョン1:GNU GPL、バージョン2:Perlと同等

作者は、C、Perl、Javaに関する書籍、雑誌連載で著名である。
YukiWikiバージョン1は、wiki クローンとしては基本的な機能のみで構成されていた。その功績はその機能の優位性ではなく、KbWiki など YukiWiki を改良した、もしくは参考にした多数のwikiクローンを生み出したこと、並びに作者のサイトにおける公開 YukiWiki ページが、wikiコミュニティの一つの規範になったことにある。wikiクローンとしての最低限の機能性だけ持たせた YukiWikiMini の公開に、そうした作者の教育的な姿勢があらわれている。
『Wiki Way』出版直前に、コメント追加機能や他の wiki サイトとシームレスな接続の実現など、標準的な wiki クローンが備える機能を多数盛り込んだ YukiWiki バージョン2が正式公開された。


RWiki

名称 RWiki
作者名 咳、なひ
公式サイト http://pub.cozmixng.org/~the-rwiki/rw-cgi.rb?cmd=view;name=top
実装言語 Ruby
ライセンス Ruby と同条件(GNU GPL or Artistic License 類似)

日本発の wiki クローンとして唯一 "The Wiki Way" に解説されている。しかし wiki クローンとしてはかなり異質な存在であり、それは作者である咳(関将俊)さん自身も認めている。
これは RWiki の成立過程に依っている。RWiki は Tiki に触発されて作られたものであるが、wiki クローンの作成そのものより、ライブラリの紹介など Ruby 界への貢献に重きを置いている。実際、Ruby 公式サイトにおけるマニュアル編纂にも RWiki が利用されている。
RWiki は通常の wiki 記法ではなく Ruby の汎用ドキュメントフォーマットである RD の形式で記述される。他にもリンク先の存在しない WikiName に表示される「?」印がないなど、wiki クローンとしては欠けている機能もあるが、ページ最終更新時間が何分前か標準で表示されるなどユニークな機能も実装されている。

参考資料:関将俊「RubyでWikiWikiWebサーバーを構築しよう」(UNIX USER 2002年2月号、p60-68)


Tiki

名称 Tiki
作者名 ksr
公式サイト http://www.todo.org/
実装言語 Ruby
ライセンス BSDライセンス類似

RWiki が Ruby のドキュメントフォーマットである RD を利用するのに対し、Tiki は WikiWikiWeb 本来の書式に近い。それに加え、日本語を WikiName にするための各種改良が加えられている。またプラグインによる機能拡張も可能。
現在に至るまで、機能性に関しては日本発の wiki クローンの中では間違いなくトップクラスを誇る。公式サイトでは(wiki の範疇に留まらない)非常に高度な技術的議論が行われており、Tiki の機能性へのフィードバック、また新しい wiki クローンの作成を促している。


PukiWiki

名称 PukiWiki
作者名 sng、PukiWiki Developers Team
公式サイト http://pukiwiki.sourceforge.jp/
実装言語 PHP
ライセンス GNU GPL

YukiWiki を PHP に移植する形で開発された wiki クローン。wiki ページをカテゴリ別に分類する機能やスキンにより外観を大きく変えることができるなど、元になった YukiWiki を凌駕する形になっている。プラグインも多数開発されている。
なお、バージョン1.3までは sng 氏による単独開発であったが、現在は PukiWiki Developers Team による共同開発体制に移行している。wiki クローンの共同開発という点でも今後の展開が注目される。


PalmWiki

名称 PalmWiki
作者名 増井俊之
公式サイト http://pitecan.com/PalmWiki/
実装言語 C
ライセンス GNU GPL

作者は、情報検索、情報入力手法、ユーザインタフェースなどの分野の研究で著名である。また Unix Magazine 誌の連載「インターフェイスの街角」では何度か Wiki に関する記事を書かれている。
Palm において、メモ帳やスケジュールデータをハイパーテキストのように使うことができ、「PIM としての Wiki」の利用に最適と言える。
同じ作者による Q-Pocket for PalmPOBox を併用することにより、より高度でスムーズなユーザインタフェースが利用可能になる。


HashedWiki

名称 HashedWiki
作者名 SHIMADA
公式サイト http://cake.dyndns.org/hashedwiki/
実装言語 PHP
ライセンス BSD ライセンス類似

ページを単位にする通常の wiki クローンと異なり、ページ内のパラグラフ単位に追加、編集、削除、移動を行えるようにする「パラグラフ指向」の wiki クローン。Wiki と掲示板の類似性、相違点についてはいろいろな意見があるが、「パラグラフ指向」の wiki クローンは最も掲示板的な利用に適しているように思う。今後の展開が楽しみである。
稼動させるには、Apache+PHP+MySQL の環境が必要。


vikky

名称 vikky
作者名 津田伸秀
公式サイト http://vivi.dyndns.org/vikky2/vikky.phtml
実装言語 PHP
ライセンス ソース、バイナリとも非公開

作者は、Windows 用の vi ライクなテキストエディタである ViVi の作者でもある。
グループウェア指向の wiki クローンという点が貴重であり、公開が待たれる wiki クローンである(wiki ホスティングによるシェアウェア的ビジネスに利用できるかもしれない)。ファイルアップロード機能やアクセス権限設定機能などを有しており、また Wiki の欠点といえる表現力や管理能力について意識的に強化が図られている。


PnutsWiki

名称 PnutsWiki
作者名 戸松豊和
公式サイト http://pnuts.org/wiki/index.pnut?language=ja
実装言語 Pnuts
ライセンス Sun Public License

作者は Java に関する書籍の作者、翻訳者として著名である。
Pnuts は Java で実装されたスクリプト言語であり、PnutsWiki と併せて戸松氏が一人で(!)開発したものである。JavaServlet+Pnuts をベースとした Web アプリケーションといえる。


WiLiKi

名称 WiLiKi
作者名 Shiro Kawai
公式サイト http://www.shiro.dreamhost.com/scheme/wiliki/wiliki.cgi
実装言語 Scheme
ライセンス BSDライセンス

機能的には、イントラネットでのドキュメント作成・管理に目標を絞った wiki クローン。利用するには、CGI を動かすサーバに同じ作者による Scheme 処理系 Gauche が必要となる。


howm

名称 howm
作者名 平岡和幸
公式サイト http://howm.sourceforge.jp/index-j.html
実装言語 Emacs Lisp
ライセンス GNU GPL

正確には wiki クローンというわけではないが、Emacs 上で Wiki 風のキーワードリンクを可能にする。同様のプログラムに emacs-wiki があるが、howm はそこまで高機能でないかわりに特定のフォーマットを強要しないため気軽に導入できる。


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初出公開: 2002年06月10日、 最終更新日: 2002年09月02日
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