Link Free Mystery


 以前、大学時代の友人から当サイトへのリンクについて許諾を求められたことがある。当然「いいよ」の一言で承諾したのだが、少し不思議にも思った。どうしてリンクに許諾など求めるのだろう。

 クソ面白くもない原則論になるが、Web ページへのリンクは「自由」であって、勝手にリンクを貼って当たり前の世界である。著作権法などのお堅い法律論に照らし合わせてもこの原則以上のものは引き出せない。嘘だと思うなら、後藤斉氏がまとめた「ウェブページのリンクおよびその他の利用について」を読んでいただきたい。異論もあるだろうけど、最近 ACADEMIC RESOURCE GUIDE にも全文転載された後藤氏の主張を凌駕するものに出会った試しはない。

 もう少し過激な主張を読みたければ、山形浩生の「リンクするなら黙ってやれ!」なんかがある。こんなこと書くからあんたマッチョとか怖がられんだよ、と思ったりもするが、当人もそれは承知の上だろう。

 だからたまにリンクについて制限をつけているサイトを見かけるとひどく気分が悪くなる。ガタガタぬかすぐらいなら初めから Web というメディアを利用するな、と思うのだ。

 以前にも書いたが、そういうサイトを見かけると、リンクどころか二度と来訪したくなくなる。新聞、雑誌などの Web 版は商業誌としての基盤を揺るがすものであるし、著作権の問題もある。今はまだ過渡期であるから制限をつけたくなるのも分からないでもない。それでもポリシーさえしっかりしてれば、Wall Street Journal のように有料にしても立派に運営はできるのだから、中途半端に公開しておいて、ユーザの利用に難癖つけるのは如何したものか。


 それよりも幾らか微笑ましいが間抜けなのが個人サイトによくある、「このサイトはリンクフリーです。でもリンク後には必ず作者にメールで通知してください」式の注意事項だ。全然フリーじゃないじゃないの!

 Phinloda さんがそこらへんを茶化した文章を書いているが(格言バックナンバーの98年12月2日の分)、僕は一度「このサイトはリンクフリーです。でもリンク前に作者にメールで許諾を得てください」という内容の文章を見たことがある。これなんか Phinloda さんが書かれるように、リンクフリーを「リンクするのは無料」だと勘違いしているのではないか[註1]、と不安になる。

 でも逆にリンク有料を謳うページがあったりすると結構面白いかも。もし堂々とリンク有料を宣言しているサイトがあったら教えていただきたい。[註2]

 でも以上の原則は実は一般的でないのかもしれない。以前、ポレポレ掲示板における金川欣二さんの「女性の場合、自分のホームページをリンクフリーにしない方がいいです。」という(以上の原則に当てはめると意味不明な)書き込みに首を捻ったことがある。そのあと「とにかく無法地帯ですから、その辺に注意。」などと書かれていたが、本当に無法地帯だと思っているなら、誰だろうがウェブページなんて開設すべきではない。

 何故「女性の場合」なのか。恐らく金川さんの頭の中には写真画像の問題があったのだろう。しかし僕は、そういう(はっきりと容姿を鑑賞可能な)画像を公開しておいて、後からどうこう言う方がおかしいと思う。それ以外なら男性だって条件は同じだ。現実問題はいろいろと違ってくるでしょうがね。

 これは一般論だが、自分でリスクを予測し、現実との折り合いを付ける努力をしないくせに保護を求めるなんてフェアでないし幼稚だと思う。


 あとリンクに関してよく分からないのが「相互リンク」という奴で、結果的にそうなるのならともかく、それを他人から求められると閉口してしまう。以前「闘わないプログラマ」の Lepton さんが「自分は相互リンクの申し出は断っている」と書いておられるのを読み、他にも「自分のサイトに掲示板を設けるつもりはない」など共感するところが多い氏の意見だけに自分の考えに裏付けが出来たようで安堵した記憶がある。

 また「雑文館」の中の「リンクに際してのお願い」に書かれた主張などが最もまっとうなサンプルだろうか(後記:現在「雑文館」は閉鎖されているので、読むことはできません)。

 でも今にして思うと、かく言う自分が他サイト運営者にそういうプレッシャーをかけたことがあるのではないか、と少し考え込んでしまう。とかく人の世は難しい。


 当サイトを立ち上げて間もない頃、ある人から「相互リンクをお願いしたいのですが、どうでしょうか?」というメールを貰ったことがあった。当時はウェブページを運営していくことへの不安が大きかったので、どんなものであれリアクションがあるだけで嬉しかった。

 早速指定してある URL に飛ぼうとしたが、それが HTML ファイルでなかった。当方がデフォルトで使用しているブラウザ Netscape Navigator 3.03J ではそれは単に HTML タグそのままのテキストソースの形でしか表示されない。仕方なく Internet Explorer で表示してみた。音楽関係のサイトのようだ。TOP ページ(?)に限らず内容的に未整理だったし、ディレクトリ構成が目茶苦茶だったが、サイト開設から間もないから大目に見て上げるべきだろう。

 掲示板があったので覗いてみた。予想はしていたが、彼は相互リンク通知を手当たり次第出していたらしく、OKの返事が何件か書き込まれていた。

 正直なところこの時点で嫌気がさし、断りの返事を書こうと一旦思ったが、そこから色々と思い悩むことになった。頭の中で yomoyomo2号 がささやくのだ。

「何を気取ってんだよ。リンクしてくれるって言ってるんじゃないか。お前もリンクに一件加えてやりゃいいだけの話だろ。相手がこっちの文章をどれだけ読んでくれてるかなんてお前がどうこう言える立場か? お前のサイトなんぞをリンクしてくれる人間は他にはいないかもしれないぞ」

 その日たまたま友人とドライブしたので相談を持ち掛けると、友人は「あんたつくづく気苦労するA型だねえ」と呆れていた。つまらないことに煩わされているようにしか映らなかったらしい。

 確かに当方の血液型はA型だ。しかし、気苦労どころか神経質な上に躁鬱が激しくて、底意地が悪いのに意志薄弱、人間嫌いの厭世家で被害妄想癖まであるんだぜ(最低じゃん)。

 しかし、友人に呆れられて気持ちの踏ん切りもついた。次の日断りのメールを出した・・・が、すぐにエラーで返ってきた。先方のメーラーの設定に不備があったようだ。かくして僕は相手さんのメールアドレスを確かめるため、見たくもないページを再び閲覧することとなった。今だったらメールがエラーで返ってきた時点で憤激し、返事を出すことを放棄しただろうけど。


 今回の文章を書くにあたり、久方ぶりに件のサイトを訪れてみたが、目が点になった。どこにもリンク集のページがない!

 他人には相互リンクを乞うメールをばらまいておきながら、相手へのリンクという最低限の義務すら果たそうとしないこのページの作者に対し、初めて猛烈な怒りを覚えた。思わずそいつのサイトの URL を示し、叩きまくってやろうかとも思ったが、ふざけた高専生のサイトを宣伝してやる結果になるのも癪に触るので止めておく。

 でもこいつのお陰でリンクに関するポリシーが尚更固まった側面もある。感謝するべきかもしれない。


 キツイことを色々書かせてもらったが、他人のサイトからリンクされるというのは本当に嬉しいことだ。リンク通知が相手のサイトへの出会いになることも多く、それが素敵なサイトならば、こちらとしても相手を応援したくなるのが人情だろう。

 また自分が愛読しているサイトからリンクされるのは非常に名誉なことで、前述の Lepton さんのサイトのリンク集に YAMDAS Project が加わっているのを見つけたとき、僕は文字どおり小躍りしてしまった(そうして喜んだ数日後に、「罵倒メールとの対峙」に書いた事件が起きるのだけど)。

 個人のウェブページなんて、TOP ページと自己紹介ページとリンク集さえあればそれなりにカッコがつく。実際そこだけで終わっているものも腐るほどある。当方が Web サイト批評などという厄介なことをやっているのは、気苦労を抱え易い性格であると同時に、基本的に羅列的なものになりがちなリンク集にこだわってみせるという偏屈さがあったからなのだろう。


 続編も書きましたのでご覧下さい。


[註1] 「link-free というのは native speaker には「リンクがない」か「リンクするのが無料」という風にとられる」という指摘を CHARADE さんからいただきました。似た話を当方も何かで読んだ覚えがあったのですが、半分信じてませんでした。そうなると僕の文章の方が的外れになってしまうのですが、本文中の「リンクフリー」とは和製英語としてのそれのことだ、とご理解下さい。当サイトの他のところで使用されている「リンクフリー」という用法は修正させていただきます。しかし、「link free でもいいのではないか」という意見も根強くある。

[註2] リンク有料というサイトはさすがにないでしょうが、Lepton さんから面白いページを教えていただきました。題して「無断リンクを筆頭とした、ふざけたリンク禁止の会」、略して「無ふ会」というらしいです。えっ? そのページへのリンクはって? 噴飯ものの御託並べる輩に許可とるなんざあほらしくてやる気になれません。


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初出公開: 1999年07月24日、 最終更新日: 2001年10月21日
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