Marco ArmentがFacebookのOpen Compute Projectを斬る

著者: Marco Arment

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Marco Arment による Facebook’s Open Compute Project の日本語訳である。


Facebook が Open Compute Project をリリースしたばかりだけど、これは最も大きなウェブサイトやウェブホスティング企業といった何百、何千のサーバが必要な場合に最適化されたデータセンターとサーバデザインを公開するものだ。

ハードウェアは Google が2009年に公開したものにやや似ているが、バッテリーバックアップに対するアプローチが異なるし、公式な設計文書も完全に公開されるので、理論的には他の誰もが Facebook の設計をコピーできるし、それを改善できる可能性もある。

冷静な業界ウォッチャーから見れば、Facebook の設計に特に革命的なところは皆無である(優れた PSU 効率を除けば)。それよりずっと興味深い疑問は、なぜ彼らはこれを公開したのかということだ。これをありがたいと思う企業は、見通せる範囲ではかなり少数に過ぎないし、その場合でもサーバなりラック設計を必要な人が発注できるわけではない――それらは設計に過ぎないのだ。

では何故公開するのか?

今回のような大規模な場合――善意の個人による小規模なオープンソースプロジェクトと違い――何かを「オープンにする」のは、ほぼ必ずそれをコモディティー化しようとしている。できるだけ機会を均等化し、他社が持っていたかもしれない競争優位の存在意義をなくすわけだ。

普通、補完財をコモディティー化するのがビジネス上一番得策である。マイクロソフトは PC のハードウェアをコモディティー化したが、それはマイクロソフトのソフトウェアに住居が必要だからだ。今日の IBM のようにオープンソースにがっつり貢献する企業は、コンサルティングやサポートサービスを売っているのでソフトウェアをコモディティー化する。Google はアプリケーション、プラットフォームならびにウェブ技術をコモディティー化するが、これは Google が広告を置く場所とその広告を見る人たちを必要としているからだ(Google はオンラインで必要なものは何でもコモディティー化しようとしている。ウェブブラウザ、DNS、そして一部ではインターネット接続さえも)。Apple は iPhone や iPad をより魅力的(かつ排他的)にするためにアプリをコモディティー化する。

誰も自分たちのビジネスでお金になったり、競合に対する障壁を維持したり、あるいは他の形で重要な競争優位をもたらす部分を「オープン」にはしない。それこそが Android の基礎基盤が「オープン」だが Google の Android 用の重要なアプリケーションやサービスの全部がそうではない理由だ――Google はプラットフォームには関心がなく、それを大事にしたくない。Google は、モダンな OS の基礎部分――Android でオープンになっている部分――が十分に良く、比較的他と同じようなもので、もはや競走上意味を持たないと事実上主張しているのだ。Android の「オープン」なコンポーネントやそれから派生したアイデアを何かしら取り入れているかどうかに関わらず、誰も Google と競合するスマートフォンプラットフォーム上でより優れたカーネルなりウィンドウ API を作って Google から市場シェアを盗むことはしない。しかし、Google のアプリケーションやサービスは鍵がかかっており、それはそこが競争に弱く、競争優位をもたらし、コモディティーとはかけ離れているからだ。

我々は Open Compute Project について、Facebook はハードウェアやデータセンターの設計で極秘の競争優位を維持しようとしておらず、また他社が自分たちのアイデアをコピーしてその結果を秘密にしても、有意義で排他的な優位性を得るとは思っていないと結論付けることが当然可能である。

しかし、この領域における Facebook へのコモディティー化の恩恵はかなり小さい。おそらく有意義な改善提案は多くは得られないのではないか。たとえ多くの他の会社が彼らのモデルを採用したとしてもほとんど誰もこのスケール1で運用しないわけで、Facebook の役に立つことはあまりない。

エンジニアの採用が主目的というのが僕の中で最も有力な説だ。エンジニアはいくらでもいるが、特にシリコンバレーでは優れたエンジニアはいつだって不足している。Google は、大多数のエンジニアにとって働くのにとても魅力的だったので、長い間才能を吸い込んできた2

今回の動きにより、Facebook は自分たちは Google と同じくらい大きく熱心な技術企業で、何百万人もの人々に影響を与える大規模で面白い技術的課題に取り組みたいなら Facebook で働くべきだとギーク界に主張しているのだと思う。


1. ずっとたくさんの人々に深く関わる可能性のある近い問題が、Facebook が運用しているソフトウェアだ。Facebook はオープンソースのサーバソフトウェアに多くの重要な貢献をしてきたが、最近ではその貢献が減速しており、ずっとたくさんの活動を独占しているように見える。

2. 主要な技術企業によって獲得が激しく争われる、最優秀な大学卒業者は、Google の大学に似た、全部込みの、決して辞める必要がない環境を大抵好む。僕はそんなの悲惨だと思うが、大変優秀な人たちの多くにそれがアピールするのだ。


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初出公開: 2011年04月11日、 最終更新日: 2011年04月11日
著者: Marco Arment
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)

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