2007年予測の採点表

著者: Edward W. Felten

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Edward W. Felten による 2007 Predictions Scorecard の日本語訳であり、2007年を占うを受けたものである。


例年通り、前年に行った予測を再検討することで新年を始めることにする。以下、我々の2007年予測はイタリック体、その判定は通常の字体である。

(1) DRM 技術は広範囲に及ぶ権利侵害を防ぎきれないままである。それと関連して、豚は空を飛べないままである。

我々は毎年これを予測に入れているのだけど、いつだって正しい。この予測は当たり前すぎて、結果にカウントするのはかなり不公平だ。判定:当たり。

(2) MySpace のページをそっくりコピーする簡易ツールが登場し、若年ユーザは互いに盗用の悪を声高に教え合う。

これは起らなかった。どっちにしろ、MySpace は今では一年前より重要でなくなっているように見える。判定:外れ。

(3) Howard Berman(D-Hollywood)(訳注:P2P 音楽共有ネットワークへのクラッキングを合法化する法案を提出した米民主党の下院議員。次の予測とあわせ、レッシグの「民主党よりネットへ:さっさと失せろ」が参考になる)が下院知財小委員会の長に上り詰めたにもかかわらず、著作権問題は議会で膠着状態のままである。

予測通り、議会では著作権の分野であまり動きはなかった。例年通り、ひどい法案も提議されたけど、通過しそうになったものはない。判定:当たり。

(4) かつての共和党同様、民主党の技術政策も国民を失望させる。それは既得権を持つほんのわずかの企業しか幸せにはしない。

ほとんどかわりはなかった。大方において、技術政策の論点は、党の路線にきちんと沿って分かれてはいない。判定:当たり。

(5) 大手レコード会社は大量の MP3 ファイルを販売し、すべてと互換性を保ちながら宣伝を行う。映画スタジオはその後に続く準備が間に合わず、成功しない DRM 戦略に固執する。

四大メジャーレコード会社のうち二つが今では MP3 を販売しており、三つ目のレコード会社の販売開始が間もなくアナウンスされる(訳注:SONY BMG の話を指しているものと思われる)。私は販売統計を見たことはないが、Amazon ストアは MP3 しか販売していないことを考えれば、その売り上げは小さいに違いない。予測通り、映画スタジオは未だ DRM に懸命なままである。判定:当たり。

(6) 誰かがオンラインでビデオ広告を入れて売る正しいやり方を会得し、その過程で大金持ちになる(我々にはそのやり方は分からない。それが分かっていれば、こんなブログを書くのに時間を費やしはしない)。

これは起らなかった。判定:外れ。

(7) 一部のメインストリームのテレビ番組が、例えば9分間毎に分離できるように番組を構成するなどして、YouTube 配信を促進することを想定して作られる。

これは賢明な予測だったと思うのだけど、実際には起らなかった。今年の商業テレビにおける最大のニュースは、脚本家のストライキだった。判定:外れ。

(8) 次世代 DVD の暗号化システムである AACS は崩壊し、現行の DVD 上で採用される CSS システムと同程度の効果しか持たない。

AACS は破られ、それを回避する商用ソフトウェアを購入できる。判定:当たり。

(9) 議会はデータ漏洩に関する国家法令を通す。その法令はカリフォルニア法の劣化版で、州法にとって替わる。

これに関する議論はあったが、法案は通過しなかった。判定:外れ。

(10) ワーム感染がゲーム機の分野に広がる。

私の知る限り、これは起らなかった。多くのゲーム機のクローズドな性質が、特に撲滅するのが難しいワームの感染をもたらすことを鑑みれば、これは良いことではある。判定:外れ。

(11) 2008年の選挙はまだ先に感じられ、一方で技術は向上している大衆は決め込んでいるので、電子投票に対する関心は低くなる。文書足跡(paper trails)に関する現在の確固たる国民の合意を反映し、Holt の電子投票法案(訳注:Rush Holt下院議員により提出された、電子投票の結果をすべて紙に印刷するよう義務づける法案)が通過する。

電子投票に対する関心は少し低くなった。ペーパーレス投票に対する大衆に広がっている不満にも関わらず、主に州や地方の公務員からの抵抗により、Holt の法案は通過しなかった。Holt 下院議員は伝えられるところによると、1月にずっと限定的な法案を準備中とのことである。判定:ほとんど外れ。

(12) まやかしの空港の安全手続きがピークを迎え、そして減り始める。

まやかしの手続きはピークを迎えたのかもしれないし、そうでもないのかもしれないが、減ってるようには見えない。判定:不明。

(13) 携帯電話分野で、ソフトウェア製品の競争が、次第にハードウェアと関係なくなる。

携帯電話のサードパーティのソフトウェアアプリケーションは、一部のクロスプラットフォームのアプリケーションを含め、着実に成長した。しかし、我々が予測したところまではいっていない。判定:外れ。

全体のスコアは、当たりが5、ほとんど外れが2、外れが5、不明が1である。次は2008年予測を行う。(訳注:今年はこっちの翻訳は行わない予定)


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初出公開: 2008年01月07日、 最終更新日: 2008年01月07日
著者: Edward W. Felten
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)
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