我々には新たに一人の伝道師が必要なのだろうか?

著者: Bruce Perens

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Bruce Perens による、Do We Need a New Evangelist? の日本語訳である。

この文章は、Eric S. Raymond「たのむよ、仕事かわってくんない?」に対する意見として書かれている。「弁士10人衆」で ESR の負担を軽減しようというアイデアは安直だし、対する ESR の「本当に手を上げる人間がいんのか、コラ」という強がりも大人気なかった。


エリック・レイモンドが、代わりが見つかり次第、オープンソースの伝道師としての彼の役目を終えたいという意志表示をした。もしくは、彼の文章はひょっとして、止めたいという申し出というよりは、他の誰かに彼の靴を履かせて歩かせようとするものなのかもしれない。もしそんなところだとしたら、私の答えは、「あんたが合ってない靴を履いてんだよ」といったものになるだろう。

エリックは我々の運動にとってとても有能なスポークスマンだったが、スポークスマンの役割は指導者でもあって、そのせいで彼は多大な批判を浴びてきている。私は何度か私自身がそうしたカリスマ的な指導者たらんとしてきたが、うまくはいってない。エリックが今思い知らされているように、常に性も根も尽き、フラストレーションが溜まってしまうんだ。これはオープンソース・コミュニティが役目を果たすやり方ではなく、我々の方針を立てるたった一人の最有力人物よりは、部外者に我々の考えを通訳する人や、コミュニティが意思決定を行えるように、コミュニティ内部での大っぴらな議論の口火を切る人を我々は求めているのだ。

エリックのポジションというのは、あたかもオープンソースコミュニティが企業であり、エリックがその CEO であると捉えたがる人たちの手ごろな中傷の対象と化した。それはそうした人たちがコミュニティに打撃を与えていると理解するまで解決されないあらゆる種類の問題を引き起こした。つまり、エリックは Apple が「落ち目」だった時期のスティーブ・ジョブスのようになるリスクを負っている。メディアが数年間どれだけスティーブを愛し、そしてそれから長い間誰もが彼を嫌ったかを思い出してごらん。それはカリスマ的人物が結果として迎える運命であり、スポットライトがもたらす日焼けなんだ。エリックは、その地位を手放すことで一番うまく逃れられるだろう。

そこで私は、エリックを、彼が思い描く役割を継続する一個人にすげかえることを提案しようというのではない。そうでなく、我々には10名ほどの優れた著名なスポークスマンが必要なのだ。私もエリックが現在スポークスマンとして果たしている負担の十分の一なら喜んでやろう。それは私にとって少しも目新しいことではない。我々は、その残りをやってくれる残り9名(もしくはエリックを加えた8名の新たな人々)を見つけることができる。彼らは全員元気であり、疲労をもたらすストレスを避けるだろう。彼らの何人かは議論すべき意見をポストすることで、コミュニティに合意を促す類の人たちだろうが、これらの人たちのいずれも、少なくとも独裁的な意味での指導者ではありえないだろう

ブルース・ペレンス

エリック・レイモンドの「たのむよ、仕事わかってくんない?」についての返答であるこれも読んでね。


[翻訳文書 Index] [TOPページ]


初出公開: 1999年05月05日、 最終更新日: 2000年03月06日
著者: Bruce Perens
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)
プロジェクト杉田玄白正式参加テキスト