yomoyomoの読書記録

2015年08月16日

林雄司『会社でビリのサラリーマンが1年でエリートになれるかもしれない話』(扶桑社文庫) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 本書は2014年刊行の『世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書』の刊行一年での文庫化である(早い!)。文庫化にあたりちょっとビリギャルにひっかけたようなタイトルに改題しており、それに合わせたような文庫版おまけも加筆されているが、内容的には(当たり前だが)単行本のときの題名に沿った本であり、こういうのはどうかと思った。

 元々ワタシは単行本のときに読みたいと思って忘れていて、文庫本になったのを知ってこれ幸いと買った人間だし、今回の文庫版にしても、本屋で手に取り、帯に思わず吹いてしまったくらいなので文句はないけど。

 そういうわけで本書は、「会社でビリのサラリーマンが1年でエリートになれるかもしれない話」ではほとんどなく、かの人気サイトデイリーポータル Z を10年にわたり継続させてきた著者のビジネスメソッド(!)を明かす本であり、最近のインタビュー記事を読んで興味をもった方は読んでみていかがだろうか。

 さすがというべきか、本書の内容は(その多くは自己啓発が入った)通俗ビジネス書には考えもつかないような話が多いが、著者と年齢が近い、つまり同じオッサンであるワタシも肩の力を抜いて読める、しかし、著者なりの筋の通り方が分かる本であった。

 そうした脱力系な本だが、「プレゼンでは誰かのモノマネのつもりで話すと気が楽になる」「質問されて話を見失った場合は、まず相手の目をじっと見るようにしている」とか真剣に役立つ話がちゃんとあったりするので見くびらないほうがいい。

 まぁ、その合間にユーザにおしっこを撮影してもらい、集まった黄色い点で金閣寺を描くウェブサービス「おしっこ金閣寺」なるアイデアをクライアントに提案し、「車に関係ない」と一蹴されてしまう話(そう、自動車メーカーに提案したのだ)があったりして、その場面を想像して恐ろしくもなるのだが。

 デイリーポータル Z の継続に関する話は、ワタシ自身にはとても実行というか参考にならないものもあるのだが、著者のバランス感覚と、あと東日本大震災のときも見せた継続の意志には敬服せざるをえない。

 しかし、本書における最大の名言はおそらく以下だろうな。ワタシ自身、これを守れなくて要らぬ恨みを買った経験が確かにあるから思うのだが、これすら実行するのは意思力がいるものだ。

 お酒を飲んでいるときに「これはひとこと言っておいたほうがいいぞ」と思うことは100%言わなくてもいいことだし、お酒の勢いがないと言えないことはたぶんお酒を飲んでないときに言ったほうがいい。(中略)ネットでも同じである。(67ページ)


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