yomoyomoの読書記録

2012年09月10日

町山智浩『〈映画の見方〉がわかる本―80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀』(洋泉社) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 こないだ町山さんのポッドキャストで『ダークナイト ライジング』のダメなところをあげつらっていて、あの映画についてはワタシもあんまり良いことを書かなかったが、ポッドキャストの内容に心底ヘキエキして、これは初めてだがポッドキャストの途中で聞くのを止めてファイルを削除した。それは前編だったが、後編ははじめから聞きもしなかった。

 その後で、そういえば『映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで』を読んだ後、80年代編も買っていたがそのままだったのを思い出し、積読の山から探して読んでみた。

 一気に読んでしまったが、やはり面白かった。

 前作は60〜70年代だったが、本作は80年代のアメリカ映画におけるカルト・ムービー篇となっている。カルト・ムービーというには有名な作品も多くて違和感もあるが(『プラトーン』なんてアカデミー賞作品賞映画ですぜ)、コングロマリットが映画会社を支配するようになり、ロバート・アルトマンなどアメリカン・ニューシネマを支えた巨匠たちが不遇をかこつようになった80年代に何としてでも自分の映画を撮ろうとした人たちの必然なのかもしれない。

 本書においても、町山さんの映画監督の作家性をぐいぐい描く筆致は力強い。本書の準拠枠を『素晴らしき哉、人生』のベッドフォード・フィールズとポッターズヴィルが混じりあった悪夢としているのも本書全体で見ると強引にも思えるが面白い。

 例えばデヴィッド・リンチの『ブルーベルベット』、不気味でヘンな映画だなぁ、これがリンチの文字味なんやねぇ、と教養の足らないワタシはぼんやり観るわけだが、各場面における絵画的イメージの裏づけをビシバシしてもらうと非常にありがたい。

 本書の副題に名前が挙げられるリドリー・スコットの『ブレードランナー』も同様で、自分の中で何となくぼやっとしてたところが大分すっきりなった。文章のクライマックスでスコットの作品を次々と挙げて同じ構図を当てはめるところはどうかと思ったけど。

 本書で俎上に上がる作品は観ているものが多いが、テレビで観た『グレムリン』や『ロボコップ』はほとんど忘れてしまっていることに気付き、ちゃんと観たくなったし(特に後者)、デヴィッド・クローネンバーグは好きな映像作家だが、これまで何故かチャンスを逃してずっと観そびれていた『ビデオドローム』を観ないといけないなと思った。


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