yomoyomoの読書記録

2011年11月21日

峰なゆか『アラサーちゃん』(メディアファクトリー) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 著者の峰なゆかさんのことは、インサイターに掲載されたインタビューを読んではじめて知ったが、このインタビューに底知れさを感じて彼女に興味を持ち、ブログを読んだらすごく面白くて愛読するようになった。

 その後、幸運にも峰さんに三回ほどお目にかかる機会があり、彼女のファンになった話を長々と書いたのだが、それは読書記録とは関係ないのですべて割愛する。

 そして、およそ一年前からアラサーちゃんが始まり、確かにインタビューでまたマンガも描こうと思ってると言われていたが、こんなツボを突いた四コマが描ける人だったのか! とその才に慄き、以来「アラサーちゃん」は必ず本になるはずとその日が来るのを楽しみにしていた。

 ハートが、ハートがたくさん! とうわ言を言いそうになる素敵な装丁の本書だが、開いてすぐの登場人物紹介のページからして読ませるものがある。

 ワタシは少し前の「週刊SPA!」に載っていた登場人物紹介でゆるふわちゃんが34歳なのを知り衝撃を受けたものだが、本書では年齢や職業に留まらず年収まで明記してある。「アラサーちゃん」を読み始めた頃はアラサーちゃんと作者を同一視し、峰さんはまだ二十代半ばなのにアラサーもなかろうよと違和感を覚えたものだが、あとがきによると今まで出会った上玉女子の外見・内面・モテテクのすべてをぶっこんだキャラがアラサーちゃんとのことで納得である。

 内容はブログで一度読んだものが多いが、単行本化にあたりすべて書き直されているので新鮮に読めるし、ウェブ未公開の作品も多いのでウェブ版の読者にもお勧めできる。正直に書くと、ワタシはウェブ版の画のほうが好みだったりするが、これは初見時のインパクトが自分の中で美化されているからかもしれない。

 本書を男女あるある本として気楽に読む人もいるだろうし実際楽しく読める本だが、一方でワタシなど要所に感じる著者の鋭利な観察眼に「ひぃっ!」と声をあげそうになる。本書の表現を借りるなら、男と女の間を流れる川の水の苦さを感じさせるものがある。

 主人公であるアラサーちゃん以外にも、「「そんなことないよ」の行く末」で見せるゆるふわちゃんの容赦なさ、「目をつむるは最強のディフェンス」と「ブサイクル」におけるサバサバちゃんに対する著者のシビアな視線が印象的だが、特に後者を読んでいて、男性に置き換えたら自分に当てはまるじゃん、そりゃモテないわけだよね、と今更ながら思い当たって暗くなったり。

 あと当然ながらというべきか性的に踏み込んだ話も多いが、個人的にはオラオラ君がスパーンとやられる「名器の真相」が受けた。

 著者の最近の仕事では「男子禁制☆峰なゆかのヒミツの更衣室」(男子禁制なのに覗いてすいません!)など毎回毎回剛速球な回答に唸らされるが、こうなるとファンは欲深いもので、文章のみの本も早く出ないかなと願うわけである。


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