yomoyomoの読書記録

2010年05月31日

侍功夫編集『Bootleg Vol.1 DYNAMITE!』 このエントリーを含むブックマーク

表紙

 先日開かれた第10回文学フリマにおいて購入。

 『Bootleg Vol.0』は同じく文学フリマにおいて瞬殺の勢いで売り切れたという話を聞き、11時の開場と同時に確保するつもりだったのが、工事中のためか京急蒲田駅にコインロッカーがなく旅行鞄を預ける場所を探して往生したり、その途中に入ったトイレでメガネを忘れたのに気付いて走って戻ったりで、マンガのようなドタバタぶりで会場にたどり着いたのは開場から半時間以上経った後、これはダメかと諦めかけていたが、今回は多く刷っていたようで助かった。もっともワタシ自身がそうした汗まみれのあっぷあっぷ状態だったため、ブースにいた速水健朗さん他の方々にまともな挨拶ができず、今思い出して恥ずかしくなる。

 今回は黒人特集で、なんというか、今回も暑く、濃い(笑)

 正直読んだときの驚きという意味では Vol.0 のほうが上だが、今回の特集も満足行く出来になっている。今回は特に本全体に侍功夫さんの編集が行き届いている感じだ。

 深町秋生さんは「黒人バイオレンス〜秩序の破壊と野獣性〜」という期待通りの文章を書いていて、「当時の私はといえば、本当に人を殺したくて殺したくて仕方ないほど殺意と憎悪をパンパンに溜めこんでいた。イキイキと商店を壊しまくる黒い男たちがうらやましかった」と自身の過去を述懐しているが、深町先生というと「ヤング梶原一騎」なイメージがあり、折角文学フリマでお目にかかったのに、前述のあっぷあっぷ状態の名残りと、何かつまらないことを口走ったら黒光りする竹刀でボコボコにされるのではという恐怖でやはりまともに口をきくことができなかった。あとで何でサインをもらわなかったんだと悔やんでもそれこそ後の祭り。

 速水健朗さんも『マイアミ・バイス』についての、これまたらしい文章を書いていて、こういう題材ホントうまいなぁ。ワタシは速水さんと同じ年なのに、当時あの番組観た記憶がほとんどなかったりする。当時ワタシの故郷である長崎は、民放のテレビ局が二つ(!)しかなかったためかも。速水さんの地元新潟はどうだったのだろう。

 ただ今回は個人的には特集以外の文章が特に興味深くて、古澤健さんのダリル・ハンナ論は、『スプラッシュ』が好きなワタシにとってグッとくるものがあったし、表題で「不愉快」と断じる真魚八重子さんの五社英雄論も、ともすれば好きなものばかりで固められてしまうこうした本ではユニークだし(『ジキルとハイド』観てみたい)、そして何よりマトモ亭スロウストンさんの武田鉄矢論!

 読んでいるうちに、自分が何の本を読んでいるか、何についての文章を読んでいるか分からなくなってくるドラッギーさを前に、マトモ亭さんを甘く見ていたことを謝りたくなった。これを読んでも武田鉄矢を嫌いなことに何の変わりもないけれど。


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