yomoyomoの読書記録

2011年11月04日

東野圭吾『探偵ガリレオ』(文春文庫) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 今年の春、以前に『パラレルワールド・ラブストーリー』をくれた女友達が転居にあたり、東野圭吾の本を何冊もくれた。それから半年あまり経ってようやく読む時間が取れた。本当は『容疑者Xの献身』を読みたかったのだが、まずは天才物理学者湯川学が事件に挑むシリーズの第一作である本作を読んでみた。確かこれは福山雅治主演でテレビドラマ化されているが、そちらは例によって未見である。

 警視庁捜査一課が草薙俊平が、帝都大学理工学部に大学時代の友人である湯川学の元を訪ね、捜査が行き詰った殺人事件の相談をする構成がとられており、草薙と湯川がそれぞれワトソンとホームズ役と考えてよい。

 本書に収録された五つの短編とも登場人物は少なく、倒叙物に近いものもあり、誰が犯人かというので興味をつなぐことはできないが、そこで一ひねりなり、この連作の肝である物理現象の盛り込み方はさすがベストセラー作家の手腕というべきか。

 主人公である湯川学は(文庫版の解説を書いている)佐野史郎をイメージして書いたらしいが、事前に予想していたほど極端な人物として描かれておらず、変人さについては論理性へのこだわりや偏屈さに少しの稚気を加えたあたりで留めており、例えば佐野史郎が持つ不気味さも持ち合わせていたら良かったのにとその点は少し不満だった。

 個人的には第四章「爆ぜる」が印象的で、やはり3.11以降にこれを読むと(殺人事件は別として)同じような話もあるのだろうと複雑な気持ちになる。


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