yomoyomoの読書記録

2014年01月20日

Natania Barren、Katchy Ceceri、Corrina Lawson、Jenny Williams『ギークマム ―21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア』(オライリー・ジャパン) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 本書刊行にワタシも鼻毛程度の貢献をしたということで、共訳者の堀越英美さんから献本いただいた。

 本書の基となった GeekMom ブログは、元々 Wired.com の GeekDad ブログのスピンオフ企画として始まったものである。父親だけでなく母親にだってギーク、本書の表現を借りれば、自分の興味や関心をとことん探り、その分野に対し飽くなき好奇心をもって接する人種は当然いるという事実を反映したものだが、本書は日本においてこそ意義のあるものに思える。

 著者たちの子供の頃、ギークとは社会の主流から取り残されることを意味したが、現在の子供たちが本当の自分に誇りをもってもらうために母親が一緒にできることを記したもので、単なるハウツー本ではない。本書の内容は当然ながらアメリカ文化を反映したもので、アメコミ方面などそのまま通じないところもあるが、本書の訳者はそれをできるだけ感じさせないようにする工夫をいくつも行っており、それは例えば本書の目次を読んだだけでも伝わるだろう。アメコミについて触れたが、スーパーヒーローになりたいという夢自体は普遍的なものがあると思うしね。

 本書が扱う内容はワタシが事前に予想していたよりも多彩で、工作や科学実験にとどまらず、今の時代だから IT 方面もカバーしつつ料理や手工芸も扱っており、単なる工作マニュアルではない。「親子でカルトグラフィ」「身近な町歩きを探検に変える」など読んでてはっとするものもあるし、「非オタクなママ友とのつきあい方」など思わず微笑んでしまう話もある。

 縁あって本書はオライリー・ジャパンから邦訳が出ることとなったが、これは幸運なことだと思う。オライリーの Make シリーズには、『子どもが体験するべき50の危険なこと』『Cooking for Geeks ――料理の科学と実践レシピ』、そして何より雑誌の Make など、本書の読者である母親が次に読むべき本がいくつもあるからだ。

 以下余談だが、一箇所気になったところがあったので書いておくと、96ページに出てくるアイアン・メイデンのヴォーカリストの名前の表記はブルース・ディッキンソンのほうが適切ではないか。


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