yomoyomoの読書記録

2015年11月24日

小笠原治『メイカーズ進化論―本当の勝者はIoTで決まる』(NHK出版新書) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 Kindle 版も出ているが、紙版を買った。

 いわゆる「メイカー本」は、それに関わるいろんな立場の人たちによる本が既にいくつも出ているが、本書は株式会社 ABBALab 代表取締役にして、DMM.make AKIBA の総合プロデューサーを務めた小笠原治氏によるもので、当事者としての地に足が着いた感じと、メイカームーブメントの現状と向かうべき方向性を読者に指し示すしっかりした内容の本である。

「メイカーズ」という言葉は、つい数年前から使われるようになりました。日本語としては、今のところ正確な定義は存在しません。本書を通じて、このメイカーズという言葉に特別な意味を込めたいと考えています。それは、メイカーズこそ、モノづくりが進化する過程の中で生まれた、新たな主役だということです。(11ページ)

 もちろん当事者であるからしてその内容にポジショントークがまったく含まれないわけはないのだろうが、著者も現状の問題点は問題点として指摘しているし(そういえばクラウドファンディング絡みで本書でも紹介されている Coolest の問題が話題になったね)、あからさまにアンフェアな書きぶりはないと思う。

 本書の監修には、これまた日本における「メイカー」の代表的な存在である Cerevo の岩佐琢磨さんが携わっており、その点でも内容に安心感がある。

 著者が関係する DMM.make AKIBA や Cerevo の製品は当然として、国内外の事例を豊富に紹介しているし、「パーソナライズされたプロダクトの適量生産」としての新しいモノづくりについて知りたい、これから「メイカーもの」を一冊読みたいという人がいたら、今更クリス・アンダーソンの『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』を読むよりは、本書を読むことをお勧めする。

 あと Internet of Things(IoT)の「モノのインターネット」という訳語は悪いという話は、ワタシも「Here, There and Internet Everywhere」で触れたことがあるが、そのあたりについても本書を読むと合点がいくのではないか。

 しかし、非常に残念なことに「IoT」は「モノのインターネット」と誤訳されています。IoTという言葉において重要なのは、モノにインターネットが入ることではありません。「Things」を辞書で引いてみると気づくと思いますが、物質的な「モノ」だけではなく、無形の「コト」も含む言葉です。(中略)大事なのはIoTが「人」を主語としたインターネットではなく、「モノとコトのインターネット」であるということです。(30ページ)


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