yomoyomoの読書記録

2008年05月08日

ピーター・バラカン『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 ワタシが本サイトを立ち上げて間もない頃に復刊を望む文章を書き、その後も折に触れ復刊されんかなー、と書いてきた本である。それが実現して、とても嬉しい。

 文庫本がそれこそボロボロになるくらい読んだ本で、ソウルミュージックをある程度系統立てて聴くガイドの役割を果たしてくれた。ソウルミュージックのルーツに興味があるがどれからどう手をつけてよいかこまねいている若い Hip Hop リスナーにも同じ役割を果たしてくれると思う。

 旧版との違いは、そのヒップホップ以降の動きの追加とディスクガイドの大幅な入れ替えが主である(あと原音に忠実な表記が一層徹底されているが、「ビースティ・ボイズ」ってどうなんだ)。著者がアフリカ・バンバータ以降のヒップホップにあまり興味がもてなくなった理由について率直に書いてあるが、これは予想通りだった。

 一方でヒップホップ以降について書くことで、「ディスコがソウルの息の根を止めた」という本書の結論を薄めてしまっており、最後あたりのディスクガイドが旧版以上にとりとめがない感じになってしまっているのは難点と言える。とはいえ本書が良書なのは間違いなく、本書を実現した鈴木茂さんに感謝する。

 最後に本書を読んで気になったところを二点挙げておく。235ページに「冒頭でも一度触れた、ミシシッピー州ジャクソンにあるマラコ・レコード」とあるが、これは旧版の話で、今回マラコ・レコードの名前はここではじめて出てくるはずなので、増刷するときには直したほうがよいだろう。あと225ページの Maceo Parker『Mo' Roots』の紹介に「ザ・チキン」とあるが、この曲のタイトルに「ザ」は付かない。


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