yomoyomoの読書記録

2006年08月14日

ばるぼら『ウェブアニメーション大百科 GIFアニメからFlashまで』(翔泳社) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 翔泳社より献本いただいき、帰省中に一通り読ませてもらった。ワタシはウェブアニメーションに関しては、特に話題になったものをリンクを辿って見に行く程度の人間なので、本書を読んで楽しめるか疑問だったのだが杞憂だった。

 本書は、ばるぼらさんの前著『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』とはスタイルが異なるが、対象の本質をできる限り正確に伝えんとする意志と対象への透徹した視線は変わっていない。本書では個々の Flash 作品のレビューが大部分を占めるため、有名作家への突っ込んだ批評を期待すると幾分不満があるかもしれないが、形式上著者の対象への愛がより垣間見えることで補われているように思う。

 それにしてもこれだけ網羅的な本を作るには相当骨を折ったに相違なく、著者の根気と編集者の比類なき忍耐の賜物なのだろう。

 実際の作品紹介を読むと、結構見ていると思ったが、それは事前の予測よりという意味で、本書で紹介されている Flash の大半は未見である。順番が逆のような気もするが、本書を読んだ後は、添付の CD-ROM に収録された秀作(それは本書で紹介されているものの一部なのだけど)を見るという至福の時間が待っている。久方ぶりにワクワクしている。

 あと最後の対談における竹熊健太郎さんの終始大人な発言が、この夏休みにサルまん全三巻を再読した人間として感慨深かった(と書くと偉そうだが)。そしてそうした「大人」な話題と関連して、ウェブアニメーションの商業化の話をする上で昨年ののまネコ問題は避けて通れないと思うのだが、これについて(当方が読み落としているのでなければ)ばるぼらさんは控えめなコメントに留めているように見える。もっと正面切って思うところを書いてもよかったのではないかとは思った。

 本書はウェブアニメーションという分野を誇張も歪みもない光で照らし、明澄さを与えるものである。


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