yomoyomoの読書記録

2013年09月16日

渡辺由佳里『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 『ゆるく、自由に、そして有意義に──ストレスフリー・ツイッター術』に続き、著者より献本いただいた。

 今回は、著者のブログの一つである洋書ファンクラブが元になっているが、その単純な書籍化ではなく、文芸、ミステリー、SF・ファンタジー・ホラー、ラブロマンス、児童書、YA(ヤングアダルト)、ノンフィクション、ビジネス・実用、サイエンスという九つの分野について一から読んでほしい本を合計500冊選んだものである。

 ワタシは本書の話を聞いたとき、てっきり邦訳があるものは外すのかなと思っていたのだが、そうではなかった。邦訳のあり/なしに関係なく、包括的なブックガイドを目指したものである。

 実を言うと、邦訳があるものも含めたブックガイドではありがたみが薄れるのではないかとも危惧したが、読んでみるとそれはまったく気にならない。それは500冊という文句なしの分量がもたらすものが確実にあるし、そして何よりその一冊一冊に寄せる著者の文章が、簡潔さを保ちながらもその本の良さを伝えたいという熱意と愛が伝わるものだからだ。

 そして本書における本のチョイスが、著者が読んで面白かったものが基本になっているのは当然として、自分が好きなものだけ載せたという偏った感じになっていない。これは繰り返すが500冊という分量もあるし、他者の意見も基にしているのが伝わるからで、必ずしも自分が面白いと思わなくてもそう思う人が確実にいるであろう本、自分は本の論旨に同意するかはともかくアメリカ人を理解するには読んでおいたほうがよい(例:アイン・ランド)とチョイスした本が入っているのは著者も認めている通りである。

 一部を除き、紹介される本にはその書誌情報、そして使われている英語の難易度は当然として、それを読む適正年齢も含むところに著者の心配りを感じる。これは逆に言うと、本書は(ワタシのようなおっさんよりも)若い読者に読まれるべき本ということだ。だからというわけではないが、著者は「児童書」のところを若い読者のためにもっとも心を砕いて書いたのではないだろうか、とワタシは感じた。「児童書」のコーナーに、著者の本並びにその向こう側にいる人間への深い信頼を感じ、機内で読んでいて泣き出してしまったほどである。それは、自分がもはやそこで紹介している本を読む「適正年齢」になりえないことの悲しさもあったのかもしれないと今になって思ったりもするが。

 本書は、書籍の分類の仕方も洋書のそれに即しているし、合間に入る各種文学賞の位置づけなどの文章も親切である。本書をガイドに洋書を読む人が増えれば言うことなしなのだが、そうした読者たちが集って読書会なんかが開かれるようになるとよいですね。

 ワタシもデヴィッド・バーンの『How Music Works』あたり読んでみようかな。


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